一切の面識が無い91歳の高齢を救助した夫婦に対して感謝するどころか、殺人者としての汚名を着せて巨額の賠償金まで要求するという事件が中国で起きた。
しかもこの巨額の賠償金を要求していたのは老人の遺族だったことまで分かった。
40代の女性が帰宅中に91歳の老人を発見するところから始まった。中国海南区に住む40歳女性は自転車で仕事から帰宅中に大型貨物車両が頻繁に通る道路付近で91歳の老人を発見。これを避けようとして、倒れたのだ。貨物車両との直接の接触はなかったが、この事故により気を失って道路に倒れてしまった。
事件の唯一の目撃者だった40歳の女性と、その後ろから来た女性の夫と一緒に救助し総合病院に搬送した。
救助当時、老人の保護者がいなかったために、夫婦は老人の診療費と入院治療費などの名目で1360元(約2万1500円)を建て替えた。診察の結果、トラックのクラクションの音に驚いて倒れただけで、91歳の老人に外傷は見つからなかった。
しかし、高齢だった91歳の老人が治療直後、病室で突然死亡てしまったのだ。診療を担当した医療陣は彼の死亡事由について「特別な死亡事由は発見されなかった」という。その後、老人を救った夫婦は、死亡した老人の遺族を探し、彼の死亡を知らせたという。
問題は、91歳の老人がの死亡の知らせを知った遺族が、夫婦を殺人容疑で告訴すると言い出したのだ。急変し死亡した老人の遺族が、老人の死亡と関連して氏夫婦の故意または過失があったはずだと主張したのだ。遺族代表とされる人物は、まず海南市の管轄公安機関を訪れ、夫婦を告発した。
遺族らは当時、事件の内訳について自主的に調査したと主張し、事件当日、電気自転車に乗っていた夫婦が事実上無免許状態で運転したと主張した。また夫婦は当時、制限速度以上に電気自転車を運転し、このため移動中だった老人と衝突して死亡した可能性が非常に高いと声を高めた。
同事件は、海南市第1人民法院で1審裁判を担当、遺族は夫婦に老人死亡に対する賠償として計24万元(約380万円)を要求した。しかし、裁判所側は夫婦側の主張が認められたことで、事件は一段落したように見えた。特に当時、第1審裁判を担当した裁判部は「遺族の主張のように夫婦が電気自転車を運転中に王さんと衝突したという決定的な証拠はない。無罪推定の原則に基づき、証拠不十分を理由に訴訟を棄却する」と明らかにした。
しかし、遺族がこの判決を不服とし、第1中級人民裁判所に控訴を申し立てたことで、論争は続いた。遺族代表の人物は「助けた女性の不注意で発生した死亡事件で、この夫婦はまるで自分たちが善意で老人を救助し、病院費まで支払ったと話している。彼らが事件直後、老人を病院に移送して診療費一切を自発的に支払ったということがまさに彼らが偽りで事件を企んでいる最も大きな証拠」と主張した。
二審裁判部も同様に当該訴訟一切を棄却処分とし、一審判決と同様の判決を下した。さらに当時、2審判決を担当した判事は「緊急な状況で自発的に罪のない市民を救助し徹した市民に対して犯罪容疑をかぶせ、賠償金を要求することは、社会正義の具現上、正しくない事例。遺族は救助者の女性が老人の死亡事故と関係があるという明確な証拠がない状態で疑って訴訟を続けることは、事実上、賠償金を狙ったとしか解釈できない」と怒鳴りつけた。
また「世の中にはまだ温かい人が多い」とし「遺族ははっきりとした根拠や証拠がない状態で正義に満ちた市民が自分たちが行った善意を後悔するような行為をしてはいけない」と厳しく忠告した。
こうして、夫婦は無事無罪を勝ち取ったことになるが、遺族には一度も感謝されず、それどころか汚名まで着せられてしまい、下手すれば有罪になっていたところだ。判事が正しい判決を下したことにより今回は一見落着となる。
そもそも遺族は「女性が自転車を老人にぶつけた」としているが、倒れた老人には外傷はないと診断されている。